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執筆者の写真橋元雄二

『月の兎』

更新日:6月17日




良寛は,『今昔物語』や仏教経典にある月の兎の話が大好きで、子供たちに昔話をせがまれると、よくこの話をして、そして、この哀れな物語に、いつも涙ぐむのであった。その物語は、こうだった。昔々の大昔にあったということだが,猿と兎と狐の三匹が、それはそれは仲よしで、いつもいっしょに遊んでいた。すると天の神様が、本当に仲良しなのかどうか、確かめてみようと思われて、みすぼらしいお爺さんに化けて、よたよた歩きながら、三匹のところに行って,こういわれたのだ「お前たちは、種族が違うのに、同じ心で仲良く遊んでいる感心なものだと聞いている。ところで、わしは今飢えて死にかけている。「どうか一緒に助けてくれないかと」と。そこで猿はすぐに木に登って、木の実をたくさん取ってきた。狐は利口なものだから川へ行って魚をうまく捕まえて、おじいさんに差し上げた。しかし兎は、野山にをあっちこっち飛び歩いたが,何にも持つて来れなかったので、神様のおじいさんは兎を責め、「お前さんは無情なものだ。私にはなにもくださらないのか」と言われたが、兎さんは少し考えていたが。猿と狐をだまして言った。「猿さん、どうか、木枝をたくさん集めてください。狐さんどうかその木に火をつけてください」猿も狐も仲の良い兎の言うことだから、言われたとおりにした。すると兎は、いきなり自分の身体を火の中に飛び込み,おじいさんに差しあげたのだ。神様のおじいさんは、それを見て可哀そうでたまらなくなり、身を地上に投げ出し、転がって泣かれた、そして、しばらくしてからおっしゃった。『お前たち三匹の友達はいずれのものが劣るものではないが、私は兎が可哀そうで仕方ない』と。そしておじいさんは神様の姿に戻られて、兎の亡骸を抱いて大空をかき分け、月の宮殿に持っていかれ葬られた。その話は今でも「『月の兎』として童揺としても読まれている。良寛にとってこのけなげな兎は自分のように思われた。この話をこどもたちにお話しすると子供たちがいるにも関わらず良寛は兎の事で頭がいっぱいで、子供たちがそばにいるのを、忘れてしまうほどだったそうだ。また良寛はこの話を長唄に詠みこんで親しい人に贈っている。続きは長いので省略させていただきます。


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