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『牡丹泥棒』

  • 執筆者の写真: 橋元雄二
    橋元雄二
  • 12月11日
  • 読了時間: 1分
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良寛は、漢詩や和歌にも優れていたが、特に草書に秀で、その筆の動きは、神業のようであった。しかし、揮毫を頼まれても軽々しくは承諾しなかった。ある里の富豪が庭に牡丹を植えていた。毎年、花の季節になると良寛も鑑賞に出掛けたが、必ず帰りには花を折って持ち帰った。富豪は、以前、良寛に書を頼み、良寛も承諾したのだが、未だに手に入れずにいた。そこで一計をめぐらした。使いの者を送り、「牡丹の花の見頃ですよ」と良寛を誘った。良寛は慌てて出かけて行き、例年と同じように数本の枝を折った。それを見ていた富豪はわざと良寛を怒り良寛を室に閉じ込めそして硯と筆をその中に置き、見張りの者に「書を書けば許すが、さもなければここから出してはならんぞ」と大声で言いつけた。

そこで良寛は、「論語」にいう、(道理にかなったことで人は裁かれることはあるが、道理のないことで裁かれる事はない)と言う意をこめた俗謡を書いた。これを見た富豪は、ただぼうぜんとするのみであった。良寛は手を叩いて喜び帰りに牡丹の花を抜いて持って帰っていったそうである。

 
 
 

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