良寛が、与板宿の山田家に泊まった時の事である。その家に動物の絵を描いた掛軸があり良寛はとても気に入っていた。ある日、良寛は,辺りに誰もいないと思い、その掛軸に向かって、絵に描かれた動物の真似をしていた。しかしその時、家の奥さんが、良寛の様子を隠れて見ていた。良寛が、「わしが何をしていたか、見ておられるのか」と問うと、奥さんは、「掛け軸のけものの真似をしておられました」と答えた。そこで、良寛は、「あなたは賢い人だから良いが、他の者には内緒にな。奉公人達が、わしが気でも違ったのではないかと心配するでな」と、頼んだという。時々良寛はこのように気に入ったものがあると我を忘れて突拍子のない事をする癖があったようだ。
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