top of page
検索
執筆者の写真橋元雄二

『良寛と巻菱湖との一双の屏風』

更新日:2024年3月7日



新潟の書家・巻菱湖(まきりょうこ)が江戸より帰国し,諸処で筆を揮っていた時のことである。ある大金持ちの依頼で、一双の金屏風に揮毫することになつた。そして菱湖は、半双を書き終えて別室で休息した。誰もいなくなった部屋へ、一人の老僧がふらりと上がり込み、筆を執るや、残りの半双へ遠慮なく揮毫し、また去っていた。これを見た家の者が主人に伝えると、主人は顔をしかめながら、菱湖と一緒に見に行った。菱湖がその書を見ると、筆遺いは力強く、いきいきとして真に迫り、非凡の傑作であった。菱湖は、『ご主人、早く今の老僧を追いかけなさい』と、その後を追わせた。家から追っ手が走って来るのを見た良寛は何も事情を知らないから、いきなり地面に座り込み、『どうか命ばかりは、助けて下され』と、命乞いを始めた.「そうではありません」と、追っ手は、先のいきさつを話し、良寛を家まで同行した。主人は良寛を手厚くもてなし、菱湖と共に,半双の揮毫に感謝した。この巻菱湖と良寛の一双の屏風は、双壁とされ、その家に大切に保存されているという。

閲覧数:8回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page