亀田鵬斎とは江戸の神田の書家、儒学者、文人であり越後に良寛なる優れた書をかく僧がいると聞いて、わざわざ越後の良寛の五合庵に訪ねて来たことがある良寛は喜び迎えて自ら桶に水を汲み、鵬斎の足を洗わせ、互いに対座した。良寛はあまり語らず鵬斎が何か問えば、ただそれに答えるのみであった。そうして日暮れになり鵬斎が「飯はありますか」と尋ねると良寛はニッコリ微笑み、先に鵬斎の足を洗わせた桶に米を入れて、外に出て行った。しかし、しばらくしても良寛は帰ってこない。鵬斎は米を研ぐのにどうしてそんなに時間がかかるのかと、外へ出て見ると良寛は,谷川のほとりの石に腰を下ろし、飯を作るのも忘れて秋天の明月に見とれていたという。翌朝鵬斎が帰ろうとすると、良寛は、「あなたは唐辛子が好きか」と尋ねた。鵬斎が、「好きですが」と答えると、良寛は一紙を広げ数行の字を書いて鵬斎に与えた。鵬斎が見ると、そこには、「なんばん なんばん なんばん」と書かれていた。これには鵬斎も呆れるばかりあったという。良寛の書法を学びその後鵬斎が江戸に帰りつき、出所が不明であるが江戸の川柳に「鵬斎は越後帰りで字がくねり」と揶揄されている.その後も二人は互いの交流があったようだ。
「良寛の友人の亀田鵬斎との逸話」
更新日:2021年4月23日
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