長岡藩主牧野忠精は稀代の明君と言われるほどの人であった、良寛の人柄を慕い、新潟巡視の折り、わざわざ寄り道をして、良寛の住む、五合庵を訪ねることになった。その報せを聞いた村人は、良寛の留守の庵へ来て、庵の掃除や、庭の草引きをした。そこへ帰ってきた良寛は、綺麗に掃除された庵を見て、「こう草を抜かれては、昨夜まで鳴いていた虫も、すっかり逃げてしまい、もう鳴いてはくれまい」と嘆いた。しばらくして藩主が来たが、良寛は一言も物を言わなかった。藩主は、和尚を城下に迎えたいと,ていねいに招いたが、良寛は黙って筆を執り、 『たくほどは風がもてくる落葉かな』意訳:私が庵で燃やして煮たきするくらいは、風が吹くたびに運んでくれる落ち葉で十分間に合うことだ。 だから私にとっては、この山中での暮らしは物に乏しくとも満ち足りていることよ。と書いた。これを見た藩主は納得し敢えて強制することもせず、厚く良寛をいたわって帰って行った。この話は長岡場内のことでの話であるとも言われている。普通の坊主であれば地位も約束されお金の苦労もないはずであるが貧を重んじていた良寛には城下に召抱えられることを藩主も理解したのだろうからこそ無理強いはしなかったと思われる良寛らしい断り方である。
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