「月読(よみ)のひかりを持ちて帰りませ 山路は栗のいがの多きに」 :良寛:
歌人の斉藤茂吉はこの歌について、「なんともいえないやさしい心の歌である」「こたへられない程よい心の歌である」と檄賞している。近代の大歌人茂吉にこれだけ褒められただけでも良寛はもって
瞑すべきであろう。実際この歌を口ずさんでいると、良寛の人なつっこさ(上句の引きとめる気持)と、思いやり〈栗のいが〉と素直に心にあたたかくしみてくるのである。どうか月が出るまでもうしばらくお待ち下さい、山路に多い栗のいがで痛い目にあわぬように。茂吉は「良寛は女人に対してもやさしく心遣いのできる人に相違ない」というがまったくそう思いたくなるほどの心遣いだ。しかしこの時によんだ歌は良寛の親友の阿部定珍がわざわざ良寛の住んでいた五号庵にお酒を持ってきた時の感謝の気持と月の出てない真っ暗な夜道は栗のいがを間違って踏んでしまいますから月が出て月明かりで少し明るくなってから栗のいがを踏まずに充分気をつけてお帰りくださいと阿部定珍を気遣った時の歌である。
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