良寛には貞心尼という女性の弟子が居ました。貞心尼は武家の娘で、ある医師のもとへ嫁ぎましたが離婚し、その後良寛と知り合い弟子になりました。その貞心尼が、どういう事情があったか分かりませんが、何かで落ち込み,庵に引きこもってしまったのです。外へでようともせず、人に会おうともしませんでした。そんな[貞心尼の様子を聞いて良寛が手紙を送りこう述べています。「自分を犠牲にして、世のため人のために汗を流している人がたくさんいます。一人で庵のなかに閉じこもっているようではいけません。」としたためて居ます。[人は落ち込むと誰にも会いたくなくなります。人に会ったり、話したりもしたくなくなるものです。しかし、そうやって家の中でウジウジしていても、何の解決にはなりません。それどころか、いっそう気持が沈んでいくばかりでしょう」と良寛は言いたかったのでしょう。そこで良寛は貞心尼にこう励ましましたのです。「仏教徒の仕事は、苦しむひとたちの心を楽にしてあげることです。そのために尽力している人がたくさんいます。しかしあなたは庵の中に閉じこもっているというではありませんか。苦しむ人のために、あなたも外へ出て活動しなさい。それがあなた自身の心の悩みを救うことになるのですから」と。閉じこもるのは自分にこだわっているからです。自分にこだわればいっそう苦しみが増すだけです。自分のこだわりを捨て、他人の為に尽くすことで、実は自分の苦しみからも離れられるのです。
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