「反応するな、まず理解せよ」草薙龍瞬著の「反応しない練習より」
- 橋元雄二
- 2019年11月30日
- 読了時間: 3分
更新日:2019年12月11日

なぜ、ヤクザの男は涙をみせたのか
都内某公園で、ホームレスの人達への炊き出しを手伝って居た時の話です。ある朝、ボランテイアスタッフの人たちが、顔を強張羅せて走ってきました。「暴れている男がいます!」急いで会場のほうに向かいました。二百人はいるホームレスたちが遠巻きに見ている中、ひとりの男が酒を飲んで暴れていました。上下真っ黒なスポーツウエアで、右袖に「仁・義・礼・智・信」という真っ赤な筆文字の刺繍
日焼けした丸刈りの生え際には剃りこみが入っています。誰が見てもそのスジの人間とわかる男でした。男はテーブルに準備した大きなカレー鍋のほうにずんずんと歩いて行きます。「こんなもんひっくり返したる!」と叫んでいます。男の前に、私は立ちました。男は目を剝いて、怒声を浴びせてきました。「おい、コラ坊主、ワシに喧嘩売っとんのか?「まあ話しようや」笑みを向けて話かけました。「おまえらがやっとる炊き出しな、こんなもん、偽善と違うか?「偽善かもしれんなあ」「オマエらに一体何ができるんじゃ?」「なんもできんかもしれんなあ」けして相手を否定せずに、ただ理解することに努めます。そのうち、警官が五人やってきました。スタッフが連絡してしまったのです。「誰やオマワリ呼んだんは!」男は逆上して、警官たちにも喧嘩を売り始めました。しばらく押し問答をしていましたが、さすがに警官には勝てません。男は腕を引かれて、署まで連れて行かれそうになりました。私は、男と警官に間に立って話を聞いていました。動き始めた男は、じーっと私を見っめてこう言ったのです。「ワシの母ちゃんはな・・・・刑務所入っとるんや」男の細い目から涙が流れ堕しました。「そうか・・・会に行った事はあるんか?」「ない」と震えた声で言います。「手紙は書いた事あるんか?」と聞くと、「ワシは、文字が書けんのじや」と、声をあげて泣きじゃくりました。「わかったそれじゃあ私が書いたる。今日、警察署から戻ってきたら、一緒に書こう矢」「書いてくれる?」と、しおらしく聞いてきます。「でもなんて書いていいかわからん」と又泣きます.「生んでくれてありがとう、でええんや。一緒に書こや。待ってるからな」男は、署へ連れていかれました。その夜彼と無事再会を果たしました。聞けば中学も出ておらず、文字が本当に書けませんでした。母親も父親も、苦しい人生を背負っていたらしく、もう二十年近く会っていないといいます。暴力団の下請けみたいな仕事で日銭を稼いで、酒で寂しさを紛らわすという荒んだ生活をしていました。真夜中までいろんな話をしました。その日以来、彼と私は友人になりました。まさに「反応するな、まず理解せよ」の精神でこれは社会、会社、職場、家庭の中でも通じるものがある。良寛も人から嫌なこと言われたらは無視するつまり反応しないの精神で生き抜いた人であった。
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