「良寛の親友有願の逸話」
- 橋元雄二
- 2020年9月18日
- 読了時間: 1分
更新日:2020年12月11日

良寛の書く絵は素人の筆とは思えない。伝わるところでは燕宿(現、燕市)に庵を構えていた有願という僧に習ったという。有願は狩野派の絵を学び、相当にいい絵を描いていたという。有願もなかなか変わった人で、こんな逸話がある。有願は燕宿の万能寺に在していた。その庭に老木の桜がある。ある年、その花の下で庭掃除の箒の手を休めて花を眺めていた。すると一人の旅の僧が訪ねて来て「私は肥前の佐賀から来た者ですが、私の町の高伝寺に住職がおりません貴僧が法縁と言うので、皆で相談し、迎えに参りました」と言う。有願は一所不在の僧ですから喜んで参りましょう。後から出かけますから、一足先に出かけて下さい。」と約束したが、しばらくして、もうすっかりそのことを忘れてしまった。翌年の桜の季節、その花を見ながら、去年の約束を思い出した。そして、旅の仕度もそこそこに佐賀の高伝寺に向ったが,既に住職がいた。有願は、飄然と立ち去り、諸国を行脚しながら越後に帰り、新飯田村の田面庵に隠居したと言う。有願は良寛の親友の一人で、良寛の漢詩にも有願を歌った物があり、「苦(ねんご)ろうに思う有願子、平生、狂願の如し」しかし良寛もひょうひょうと生きているがこの有願も良寛に劣らず変わった僧である。良寛と気が合うのも分かるように思う。
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