良寛はよく解良家によく貰い風呂をあてにしてふらりと訪れることがあったそうだ。乞食のような格好をした良寛がやってくると家族・使用人総出で迎えたという。昼間でも,着ていた衣類をすべて脱がせて良寛を風呂に入れ、衣類はたちまち洗濯され、まずは、さっぱりと身ごしらえを整えたようだ。良寛もきれい好きで、貰い風呂をあてにして,泊りに来ていたそうだ。そのような良寛が来るだけで解良家ではいままで反目したり、いがみ合ったり何かと折り合いの付かない気詰まりな空気も軟化して和やかに睦まじくなったと言う。それだけではない。そのほのぼのとした余韻はずーっと持続して、良寛が帰ったあとの数日はとてもいい関係だったそうである。なぜと思われる方が多いのではなかろうか?それは良寛がわざわざ仏典を引いて、お説教をたれたり、善行を積めとか陰徳を施せなんておっしゃるわけでもない。どうかすると台所に回って、カマドの火かげんを見たりして,家事にも気配りなさる。それが一段落すると、ひとり奥座敷で良寛はいつも座禅を組んでいた人間の道はどうあるべきかというむずかしい訓話をする分けでもないのだが「良寛の内奥に輝いている、徳の力と言うのだろうか、接する人になんとも言えない感化を及ぼしているようだった」と述べている。後に解良家の良寛の外護者であった解良叔問の三男坊であった栄重が、その様子を上のように書き留めている。
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