僧侶が托鉢の際に持ち歩いた鉢
良寛は、人から書を頼まれても、なかなか書かなかった人であった。しかし、興が乗れば縦横無尽に書き残した。ある時七日市の豪農山田家を訪ね、どうした機嫌か、すぐに筆と墨を借り、女中部屋のすすけた障子に「鉢の子」歌を一首を書いた。そして滴るばかりの墨痕を眺め,会心の笑みを残して、またふらりと帰っていった。残った和歌は「鉢の子をわが忘るれど人取らず、取る人はなし、あわれ鉢の子」と書き残して行ったそうである。良寛は夢中に没頭すると煙草入れや托鉢用のお椀を置いて忘れて帰ることが多かったそうである。でもなぜか良寛の手元に戻ってきていたそうである。良寛はそれほど民から愛れた僧侶であったという証ではないだろうか。
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