『半兵衛』
- 橋元雄二
- 2023年10月30日
- 読了時間: 1分
更新日:2024年6月12日

解良(けら)家が庄屋をしていた牧ケ花(現西蒲原郡分水町)を良寛が托鉢していると、ある人が良寛の耳もとで、「ここは半兵衛の家だがね」と言った。良寛はぬき足でそっと通り過ぎた。少し先に行って、また托鉢をしようとすると、また同じ事を言われたので、驚いた様子で、そっと立ち去る。こうして数十軒を、同じようにくりかえしたという。これは、かって半兵衛という男が、酒に酔って良寛に乱暴をはたらいたことがある。それを良寛がひどく怖がっていたので、地元の人が良寛に悪戯するようになったのだという。しかし、半兵衛の家が十数軒もあるわけがない。そんなことは良寛もよく知っている。それに、半兵衛を心から恐れていたわけでもなかろう。しかし、せっかく人が面白がって遊んでいるのを、その遊びを壊してはかわいそうだ。なるべく相手の期待にこたえて、からかわれてやろうというのが良寛の人生観なのである。なんとも微笑ましい良寛らしい行いである。
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