『栗の山ばかり』
- 橋元雄二
- 5月31日
- 読了時間: 1分

ある秋の日に五合庵に良寛を訪ねて客が来た。ちょうど五合庵には貰った山盛りの栗があった。それを見た客が、山盛りの栗と秋の風景とをかけて、「風景は山ばかりなり五合庵」と詠んだ。(山ばかり)は、当時の三条地方の方言で言う「山盛り」と言う意味である。しかし、良寛はその意味が分からず黙っていた。それから数日して三条に托鉢に出掛けた時に市場を通りかかると栗を売っている者が、「山ばかり、山ばかり」と、大きな声で客を呼び込んでいた。これを聞いた良寛はハタと手を打ち、「分かった,分かった。うまいぞ、うまいぞ」と言って帰って行った。先日に訪れた客の「風景は山ばかりなり五合庵」と詠んだ客の句の意味に良寛はようやく気づき合点がいつたそうである。
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