『良寛の一切径の虫干し』
- 橋元雄二
- 2023年11月28日
- 読了時間: 1分
更新日:1月30日

ある年の暑い盛りの土用の頃、良寛が「今年は五合庵で『一切経(いっさいきょう)』の虫干しをするから、見に来なさい」と村の人々に知らせました。
一切経とはあらゆる経文をまとめたもので、この「一切経」の虫干しの風にあたると、その年の一年間は病気や災難にかからないと信じられていました。
そこで、村人達は、よろこんで五合庵に出かけていきました。しかし、一巻のお経さえも見えません。「良寛さま、一切経はどうしました」と声を掛けると、縁側で裸で横たわっていた良寛は、「ほれ、ここにあるよ」と言って、自分の腹を指さしました。見ると、だぶだぶした腹に、「一切経」と大きく墨で書いてありました。村の人たちはあっけにとられ、狐につつまれたような思いで、山を下っていきました。
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